●牌九とは

 牌九は、パイガオ、パイゴウなどと呼び、英語では、PAIGOW と記します。牌九の起源は中国で、天九牌という独特な32枚の牌を使って行い、すでに紀元前には存在していたと考えられています。この天九牌は現在のドミノの起源であるとも言われているものですが、古くは竹杯・骨牌などの形だったようで、実際に1120年に微宗皇帝に骨牌が献上されたという記録が残っています。この骨牌と馬吊が合わさって現在の麻雀へと進化していったというのが定説になっています。
 その後、牌九は、西部開拓時代にアメリカで普及し、19世紀半ばには早くもカジノゲームとなりましたが、1930年代にはいったん消滅し、1960年代になってまた復活し行われるようになったと記録されています。
 牌九はあまり馴染みのない天九牌という牌を使用するうえ、独特の役を覚えねばならないのでとっつきは悪いですが、カジノゲームの中でも比較的思考性のあるゲームで、小さい賭から大きい賭までカバーし、ゲーム性、賭博性とも奥の深いゲームです。
 中国系のゲーム故、マカオなどでは盛んに行われていますが、ラスベガスにも存在し、高級カジノゲームとしてプレイされているようです。
 なお、牌九をトランプを用いて簡単に行う PAIGOW POKER というカジノゲームもありますが、牌九とは全く異なるものです。



●牌九の牌(天九牌)について

 牌九の牌(天九牌)は21種32枚です。そのことからも分かるように、ある牌は1枚のみ存在し、またある牌は2枚ずつ存在したりします。これについては、以下の牌一覧を見てください。
 一見すると、ドミノの牌に似ていますが(牌九にドミノが似ているというのが正しいですが)、独特な牌もあります。なぜこの牌が1枚ずつで、この牌が2枚ずつなのか、と思われるものもありますが、こればかりは納得して理解してもらうしかありません。
 トランプにも強いカード、弱いカードがあるように、牌九の牌にも、牌ごとに強さが決まっています。牌の強さは、後に説明する役などで勝負する際に勝ち負けを決める要素ともなります。以下の牌一覧は、牌の強い順に並べてあります。この順序は最初は覚えにくいものですが、勝敗を決める重要な要素なので、徐々にでも覚えてください。なお、同列にある上段・下段の牌は同位です。
 
← 強い 弱い →
12
2
8
4
10
6
4
11
10
7
6
9
8
7
GEE
5
GEE
各2枚 各1枚

 上の一覧で、牌の下に書いてある数字は、牌の数字(ポイント)を示しています。このことからも分かるとおり、決して数字の大きい牌が強いわけではありません。
 弱い牌の方に、GEE という牌が2つあります。この GEE は、牌九の牌の中の特殊牌で、一見平凡に3と6に見えますが、それぞれ、3とも6とも数えてよいワイルドカードのような性質を持っています。この GEE は、単独では弱い牌とされますが、後で説明するBO(ボー)という役では最強のものとなります。



●牌九ゲームの仕方

1)天九牌をかき混ぜ、テーブル上に裏向きに並べます。
2)ハウスを決めます。ハウスはディーラーが担うことももちろんできますが、プレイヤーもハウスとなることができます。ただし、ハウスは連続してなることはできません。ハウスになったプレイヤーは賭けチップを置かずに、ハウスを示すマーカを自分の前に置きます。
3)ハウス以外のプレイヤーは、賭けチップを置きます。
4)ダイスを振り、決められた方法で天九牌をプレイヤー、ハウスに4枚ずつ配ります。
5)受け取った4枚の牌を、2枚ずつ2組の手(役)に分けます。この2組の手は、強い方を、High といい、弱い方を、Low といいます。
6)2組の手に分けたら、牌を裏向きに戻し、ハウスと勝負します。
7)勝負の際は、以下のように High の牌を横にしてオープンします。



この例では、High が GONG、Low が 8 です。(役については後述)
8)ハウスの手と比較して、High も Low も勝っていれば勝ち、High も Low も劣っていれば負け、それ以外は引き分けとなります。
9)勝負で負ければ賭けチップはハウスに没収、勝てばハウスから倍に配当されます。勝った場合には、配当からカジノの定めるコミッションがカジノ側に徴収されます。



●牌九の役について

 牌九には、ポーカーのように役があります。といっても役の数はわずかに3つでそれほど難しくありません。以下に牌九の役について説明します。(役は強い順に説明します)

・BO(ボー)

 ペアのことです。
 以下の一覧のとおりのペアの組み合わせを作ると、BOという役になります。ポーカーでいうA(エース)のワンペアと2のワンペアの強さが違うように、同じBOでも、強い、弱いがあり、その順は以下の一覧に表示されている順となります。(左が最強)

GEE JOON
12
2
8
4
10
6
4
11
10
7
6
9
8
7
5

 つまり、 のペアが最強のBO(GEE JOONといいます)となり、 のペアが最弱のBO(数が5のペア)となります。
 ペアにするのは、GEE JOONを除いて、同じ牌が2牌ずつある牌については同種牌同士のペアで、それ以外の牌については牌の数字が同じ牌同士のペアにします。
 例えば、 は10ですが、この牌は同種牌が2枚あるので、 とのペアは許されません。同じように、 と、 のペアも許されません。 は、 とだけ、 は、 とだけペアにすることができます。もちろん、 (GEE)と、 のペアも許されません。
 つまり、すべての牌は先の一覧で分かるように、ペアになれる牌は1枚しか存在せず、パートナーが決まっている、ということになります。

・WONG(ウォン)

 12もしくは2と、9の組み合わせのことです。
 具体的には、
  (どちらも12と9)、もしくは、 (どちらも2と9)のことをいいます。
 同じWONGであっても、12を含んだWONGの方が、2を含んだWONGよりも勝ります。(これは、牌の強さのランクが12の方が上だからです)
 ちなみに、 では、9の牌 のランクが同じなため、引き分けとなります。

・GONG(ゴン)

 12もしくは2と、8の組み合わせのことです。
 具体的には、
  (どれも12と8)、もしくは、 (どれも2と8)のことをいいます。
 同じGONGであっても、12を含んだGONGの方が、2を含んだGONGよりも勝ります。さらに、12のGONG同士や2のGONG同士であっても、8の牌のランクの違いにより強さは異なります。具体的には、 は、 よりもランクが上なので、勝ります。
 ちなみに、 では、8の牌 のランクが同じなため、引き分けとなります。

・役なし

 BO でも WONG でも GONG でもない手は、役なしです。役なしの手は、バカラと同様に牌の数の合計値の一桁目がポイントとなり、0が最低で9が最高となります。例えば、 は9となります。9はバカラでは最強ですが、牌九では、役なしの中では強い方ですが、BO、WONG、GONG には勝てません。また、同じ9でも、牌の強さによって強い9と弱い9があり、例えば、 の方が、先ほどの例と比べ、10の牌の強さが強いため、勝ります。従って、役なしの中で最強なのは、 の組み合わせということになります(7の牌は、 でも同位)。
 この、 と、 、つまり、12もしくは2と、7の組み合わせの9の手の事を、役ではありませんが、特別にHigh nine(ハイナイン)と呼びます。

・例

は、役なしで8(11+7=18→8)。
は、2のBO。
は、WONG(2もしくは12と、9の組み合わせ)。
は、GEE JOON(最強役)。
は、役なしでHigh nine(2もしくは12と、7の組み合わせ)。
は、役なしで9(GEE は3と数える 6+3=9)。
は、GONG(2もしくは12と、8の組み合わせ)。



●牌九の戦略


 牌九の勝敗は、ハウスの手との勝負で決まり、High、Low 共にハウスより上回った手であれば、勝ち、逆に、High、Low 両方ともハウスより下回れば、負けとなります。それ以外は、引き分けとなります。つまり、どんなに High が大きくても Low が小さかったり、逆に、Low が大きくても、High が小さければ、勝つことはできません。
 ポイントとなるのは、High、Low 2組の分け方です。この、High、Low の組を作る組み合わせこそが、牌九の戦略となります。
 例えば、以下のような手牌だったとします。
 
 これを、

 とセットすると、High は、8、Low は6ということになります。
 また、これを、

 とセットすると、今度は、High、Low ともに7となります。High は1つさがりますが、Low が1つあがります。別の表現をすれば、High の攻撃力は弱まりますが、Low の守備力は強まることになります。勝負によっては、どちらの選択もあり得るでしょう。

 次に難しい手を考えてみましょう。
 
 めまいのするような手牌です。どんなに High を大きくしても、

 これで、High が4、Low が1です。
 このような難しい手では、High を大きく取ったところで勝ち目なしです。Low をできる限り大きく取って、後は祈るのみです。この手牌では Low を最大にしても2までですが、このときに重要なのは、

 このようにしないことです。Low が2ということは、「相手の Low が0か1なら勝てる」と短絡的に考えてはいけません。同じ2の Low であっても、強い2をセットすることで、「相手の Low が0か1か弱い2なら勝てる」とできる、と考えることが重要です。

 このようにセットすれば、同じ Low 2であっても、最強牌である12を含んでいるため、仮に相手の Low が2であったとすれば、負けることはないでしょう。
 このように、牌九の戦略は、ただやみくもに High を大きく取ることだけに専念するのではなく、時には守りに入り、Low をできるだけ大きく取る、ということも忘れてはなりません。

 以下に特殊な例を示します。
 
 これを、

 とセットすると、High が GEE JOON、Low が0となります。この勝負では、High が GEE JOON なので、負けることはありません。ただ、せっかく GEE JOON があっても、Low が0なら、勝つことはないでしょう。High で勝って、Low で負け、間違いなく、引き分けとなるはずです。もちろん、自分がハウスの時や、大勝負に出ている時には、このままで引き分け策をとることもあるでしょう。
 GEE JOON を崩すかどうかについては、それぞれの戦略にもよりますが、

 の様にセットすると、High が9で、Low が7( は3とも6とも数えられるので、ここでは3と数える)となり、勝負としてはおもしろい選択とも考えられます。

 牌九にも、ブラックジャックなどと同様に、かなり複雑ではありますが、手牌の2組の分け方の House way(おすすめの戦法)なるものが存在します。ただ、House way だけに従ってゲームをすれば勝てるというものではありません。ハウスのしぐさや分けるまでの時間などを見極めて、High が高いのか低いのか、Low が高いのか低いのかを予測して、自分の手牌をセットすることが、勝負に勝つための重要な要素なのです。特に、牌九は、プレイヤーがハウスとなるゲームですから、ハウスとなる人の性格などを読みとって、心理戦を戦う感覚が必要なのです。



●牌九のトレーニング

 以下のソフトウェアをダウンロードすることで、牌九の4枚の手牌をどのように2組に分けたらよいのか、というトレーニングを行うことができます。おすすめの分け方も示されますので、勉強にも役立つでしょう。

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